ミュージアムインタビュー

vol.206取材年月:2023年7月小樽芸術村

新しい作品の詳しい情報から、重要文化財の図面まで。
皆さんにご覧いただきたい情報が、たくさんあります。
学芸員  金澤 聡美 さん

-まずはI.B.MUSEUM SaaSをご導入いただいた経緯からお聞かせください。

金澤さん:小樽芸術村の開設が2016年で、似鳥美術館が開館したのがその翌年だったのですが、体験版でいろいろ試しながら本格的に導入の検討を始めたのは2019年のはじめですね。確か、その頃に一度、説明に来てくださいましたよね。

-大雪の日でしたね。そのすぐ後に、弊社担当が改めて会社の皆様にご説明にうかがって、翌年にご導入いただきました。開館から導入まで少し間がありましたが、その間、作品データはどう管理なさっていたのですか?

金澤さん:Excelを使っていました。一度にひとりしか作業できませんし、画像を貼り付けていたせいか動作がとても重くて。また、作品データは学芸業務で使いますが、会社側でも資産管理用のリストを別に運用していましたので、一元管理したいという話になったんです。

-なるほど。それで、体験版の段階で会社の皆様へのご説明が必要になったわけですね。ご導入後、情報共有はうまくいきましたか?

金澤さん:おかげさまで。東京の会社と小樽の美術館の双方からアクセスして、とても快適に運用しています。

-それはよかったです。I.B.MUSEUM SaaSの操作については、特に難しい点などはございませんでしたか?

金澤さん:すぐに慣れましたよ。作品の情報を調べるのがとても楽になりました。

-すっかり定着しているようで、安心しました。

 


-検索以外では、どんなシーンでシステムをご利用ですか?

金澤さん:たとえば、収蔵庫にパソコンを持ち込んで使ったり。

-使いこなしておられますね。では、入出庫もシステムで管理しておられますか?

金澤さん:そちらはまだ手を付けていませんね。

-とても便利になると思いますので、もし活用をご検討になることがあれば、ぜひ仰ってくださいね。では、クリップリスト機能などは?

金澤さん:クリップリストは便利に使っています。そうそう、ひとつ質問がありました。すでに作ったリストに対して新たに作品を追加することはできますか?

-はい、できます。(画面を見ながら)このボタンにマウスポインタを置くと、ほら、こうして「このデータをクリップする」という表示が。

金澤さん:あれ? 簡単なんですね(笑)。わざわざ問い合わせて聞くほどのことでもないかなと思って、そのままにしていましたので、助かりました。

-いま計画中のリニューアル後は分かりやすくなると思いますので、その時に改めてご説明しますね。ほかに気になることはありませんか?

金澤さん:I.B.MUSEUM SaaSは、ひとつの作品に対して複数の画像を登録できますよね。その中で、いま公開中の画像がひと目で分かれば便利なんじゃないかなと思います。

-なるほど、それはよいアイデアですね! さっそく社で議論してみます(メモ)。「ひと目で識別したい」と感じる数の画像を登録なさっているなら、公開の設定などでお困りのことはありませんでしたか?

金澤さん:初めて公開する時は、事前にサポートの方に電話で操作を教わりましたので、問題ありませんでしたよ。むしろ、いろいろと設定を試すのが楽しかったです(笑)。

-それはよかった(笑)。英文タイトルを公開されたり、凡例も表示されたり、キーカラーも変更なさっていますよね。公開後の反応はいかがですか?

金澤さん:ご利用の皆様もさることながら、内部からもさまざまな意見が集まりました。どれも納得の指摘でしたので、ひとつずつ反映する形でいろいろと改善しました。

-全体的に、とても順調そうで何よりです。

 


-ところで、昨年も新たに西洋美術館が開館するなど、美術館としての事業そのものも順調に拡張しておられますよね。

金澤さん:そうですね。西洋美術館は、小樽運河のほとりに立つ旧浪華倉庫を改修して、ステンドグラスやガラス工芸品、家具などを展示しています。最近は似鳥美術館で刀剣が新しく公開されましたし、彫刻もブロンズや木彫、ガンダーラの石仏など、扱う分野も増えました。

-それだけジャンルが多岐にわたると、学芸員の皆さんは大変ですね。ご専門外のことも増えるでしょうし。

金澤さん:はい、なかなか大変です(笑)。分野ごとに外部の方々のお力をお借りしたりもしています。先日も、伊達市にお住まいの専門家の方にお越しいただいて、解説文の作成を手伝っていただいたところです。

-分野の裾野が広い上に、作品数もどんどん増えていますよね。どのくらいの頻度で新しい作品を受け容れているのですか?

金澤さん:新しい作品は大体月一回程度のペースで入ってきますよ。

-毎月ですか! あまり聞かないくらいのハイペースですね。

金澤さん:そうなんです。ですので、I.B.MUSEUM SaaSに登録するところまでは対応できるのですが、公開まではさすがに追い付かなくて。

-それは仕方がないのでは。作品情報をしっかりシステムに登録できているだけでも、大したものだと思いますよ。

金澤さん:ありがとうございます。実は、作品の基本的な情報については、館ではなく会社側で登録しているんですよ。

-あ、もしかして、それも情報共有の効果のひとつですか? 作品が入ってきたタイミングで管理側でデータを登録すれば、資産台帳のための情報を作成できるわけですよね。

金澤さん:はい、そうなんです。私たちは学芸の観点による情報を整備するのですが、よい役割分担のカタチができていると思います。だからこそ、早めに公開できるようになりたいんですけどね。

-公開情報では、どんな部分に力を入れようとお考えですか?

金澤さん:当館は外国人の来館者が多くお越しになるので、翻訳原稿がある程度まで揃ったところで、ふたつ目の公開ページを使って英文のデータベースを公開したいと考えています。あとは、地図の紐付けですね。

-地図と言うと、屋外の作品があるのですか?

金澤さん:いえ、当館は建物が分散していますし、似鳥美術館は地下1階から4階までありますので、そのフロアでご覧いただける作品をご紹介したいんです。

-なるほど。それなら、データベースに展示場所を示す項目を加えて、検索できるようにするとよいと思います。

金澤さん:具体的にはどう設定すればよいですか?

-ホームページのフロアマップに「主な作品」を閲覧できるボタンを設置して、クリックすると「展示場所」がそのフロアとなっている作品の検索結果一覧が表示されるようにしてはいかがでしょうか。展示室ごとに作品を表示しておられる美術館もありますよ。

金澤さん:なるほど、それなら手間もあまりかからなさそうなので、ぜひトライしてみたいです。あとは、旧三井銀行の建物が重要文化財に指定されましたので、ゆくゆくは建築図面などの資料も公開できればと思っています。

-弊社もお手伝いできるように頑張ります。本日はご多忙の中、本当にありがとうございました。

Museum Profile
小樽芸術村 北海道に深い縁を持つ株式会社ニトリが地元への恩返しを願い、自社所有の美術品の一部を一般公開するために設置。現在公益財団法人似鳥文化財団が運営を行う複合的な芸術空間です。国指定重要文化財の認定を受けた旧三井銀行小樽支店、似鳥美術館として生まれ変わった旧北海道拓殖銀行小樽支店など、小樽が栄華を極めた大正〜昭和初頭の貴重な歴史的建造物5棟を活用し、4つのミュージアムを運営中。気軽に文化芸術に親しむことができる小樽の新たなランドマークです。

〒047-0031
北海道小樽市色内1丁目3-1
TEL:0134-31-1033
ホームページ:https://www.nitorihd.co.jp/otaru-art-base/