ミュージアムインタビュー

vol.236取材年月:2026年7月霊山歴史館

データ管理や公開で工夫を凝らしている他館を見習って
当館も、さらにシステムを使いこなしていきたいです。
学芸員 米澤 亮介 さん

-米澤さんは、いつ頃こちらに着任されたのですか?

米澤さん:以前は民間企業に勤めておりまして、縁あって2017年に当館に着任しました。

-ということは、慣れてきた頃にコロナ禍に見舞われたわけですね。I.B.MUSEUM SaaSをご導入いただいたのも、ちょうどその頃でしたよね。

米澤さん:はい、2020年3月の契約だったと思います。

-まさしく真っ只中にご導入いただいたのですね。それ以前は、どんな方法で資料データを管理されていたのですか?

米澤さん:紙の台帳とExcelです。公益財団法人の義務として作成していた所蔵資料のリストが、データベースのもとになりました。システム導入にあたっては、資料とその情報を後世に継ぐには災害など不意の事態に備える視点も重要ということで、クラウドサービスを選ぶことになったんです。

-なるほど、データの安全性を重視されたわけですね。サービスを開始した2010年代のはじめは、むしろデータが手元にないことを不安に思われるケースが多かったので、隔世の感があります。画像データもそのまま使える状態だったのですか?

米澤さん:いえ、所蔵資料は5,000点ほどあるのですが、原則として撮り直しました。2000年以前はポジフィルムで、それ以降はデジタル画像を蓄積していたものの、学芸業務用の画像がほとんどで、大半はそのまま公開できるようなものではなかったんです。

-撮影は外部に委託されたのですか?

米澤さん:自分で撮影しました。コロナ禍で入館料収入が減少していたこともありまして、できることは自分たちでやろう、と。何年もかかりましたけどね(笑)。

-約5,000点をお一人で撮影するとなると、大変な作業でしたね。

米澤さん:でも、解説文などのテキストデータについては、上司に担当いただきましたので、二人で整備をしていきました。今では、おかげさまでデータはほぼ整っていますよ。

-あのコロナ禍と緊急事態宣言明けの混乱の中、わずかな人数でやり切ったことは素直にすごいと思います。データを整備したくても手が回らない館の方がずっと多いですから。


-では、データ公開の準備も万全ですか?

米澤さん:1,000点近くは公開できるところまで来たと思います。もう少し数がまとまったら公開を始める予定なのですが、中には一般公開が難しい画像もありますので、悩ましいところです。

-なるほど。ひとつご提案があるのですが、I.B.MUSEUM SaaSにはひとつのデータベースで二つの公開ページを利用できることをご存じですか?

米澤さん:え、そんなことができるのですか。

-はい。しっかりお伝えできておらず、申し訳ございません。

米澤さん:具体的には、どんなイメージになりますか?

-たとえば、片方を画像や解説なしで5000点すべて公開するページにして、もう片方をすべて揃った状態で公開する…という形ではいかがでしょう。数の充実度は前者で伝わりますし、他館の学芸員など調べ物をしたい方にはお役立ていただけます。一方、後者は、専門知識がない一般の方々に向けて、写真などで所蔵資料の魅力を伝えることができます。

米澤さん:なるほど、それはいいアイデアですね。そうした方法を採られている館はありますか?

-はい、あります。たとえば、ある県立の歴史系博物館では、それぞれ「目録」と「ダイジェスト」という呼称でお使いです。また、ほかの県立の美術館では、片方のデータベースにサムネイル画像付きのほぼ全作品を収録して、もう片方は美しい画像と解説が楽しめるデジタルギャラリーとして運営されています。

米澤さん:皆さんすごいですね。私も使いこなさなければなりませんね。

-いえ、地道にデータを作ってこられたこと自体が素晴らしいと思います。公開はこれからということは、現在は館内でお使いかと思いますが、データベースは実際のお仕事の上で役立っていますか?

米澤さん:もちろんです。棚に資料の番号を貼って管理していますので、収蔵庫のどこに何があるかが分かりやすくなりました。新しい資料も増えてきたこともあり、現在は改めて管理の仕組みを構築中なんですけどね。

-収蔵庫の管理には、帳票機能はお使いですか?

米澤さん:まだ使ったことはないですが、資料のラベルをシステムから出力できるんですよね。ぜひ活用してみたいですね。

-ほかにも、クリップリストや資料利用の機能も便利ですよ。資料をリストアップして、展覧会に出品して、貸出業務にも使って…という学芸業務の一連の流れをI.B.MUSEUM SaaSで一元管理できます。

米澤さん:ぜひ詳しく教えていただけますか?

-では、実際のシステムの画面でご説明しますね。まず、この画面から…(しばらく操作説明)

米澤さん:ありがとうございます、とてもよく分かりました。これは使いこなすと、業務が劇的に変わりそうですね。

-弊社側で、こうした機能の情報をもっと積極的にお届けしなければなりませんね。たとえば、ニュースレターでお役立ち機能を連載すれば、皆様にお読みいただけるでしょうか。

米澤さん:それもありがたいのですが、おそらく自分自身の業務に即した形でないと、なかなか頭に入ってこないかもしれませんね。こうして当館の事情をお話してアドバイスいただくと具体的に理解できるので、本当にありがたいです。

-なるほど、そうなるとサポートのさらなる強化が必要ですね。体制も含めて検討したいと思います(メモ)。

米澤さん:今日お話をお聞きして、知らない機能がたくさんあることを実感しました。当館としては、とにかくデータベースを整えて公開準備を進めることに集中していましたので。

-これだけの作業をこなしておられるのですから、無理もありません。むしろ、弊社側が努力すべきだと思います。


-ところで、近年の京都はインバウンドの対応も大変ですよね。多言語による案内などは、どう対応されているのでしょうか。

米澤さん:展示室のパネルやキャプションは、主要な資料に英訳を付けています。翻訳はすべて内製なのですが、ネイティブやバイリンガルの職員がいるわけではないので、外国人のお客様にチェックしていただくこともあります。お礼に、当館のオリジナルグッズを差し上げたり。

-それはよいアイデアですね。多言語対応には展示ガイド「ポケット学芸員」もお使いいただけますので、余力ができたらぜひお声掛けください。あとは、公開の実現ですね。設定作業は大丈夫ですか?

米澤さん:はい、公開設定では多様なパターンを試せるので、むしろ楽しかったです(笑)。実際に公開する段階に辿り着いたら、ホームページとの連携なども工夫したいですね。

-設定作業を楽しんでおられるのもすごいですね(笑)。先ほどのように、他館の事例などもご紹介できますので、ぜひサポートできればと思います。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

Museum Profile
霊山歴史館 幕末・明治維新期の歴史を総合的に伝える専門博物館として、1970年に京都・東山で開館。創設者は松下幸之助で、初代館長も務めました。坂本龍馬、西郷隆盛ら倒幕派の志士から、新選組、徳川慶喜ら幕府側まで、遺品や書状、資料を幅広く収蔵。5,000点を超える資料から約100点を選び、常設展や企画展で公開しています。倒幕・佐幕双方の立場から激動の時代を辿れる展示が来館者を魅了する、歴史ファン必見の人気館です。

〒605-0861
京都市東山区清閑寺霊山町1
TEL 075-531-3773
ホームページ:https://www.ryozen-museum.or.jp/