代表ブログ

わせだマンのよりみち日記

2023.06.19

記憶を呼び覚ます昭和レトロに包まれて ~ 駄菓子屋の夢博物館 訪問記

#現地訪問

「へえ~」「ほお~」といった感嘆詞。「こんなのもあるんだ」という新発見。「まだまだあるんだ」という奥行き感。そして、館を出る時の「おもしろかった~」という満腹感。頭の中でそんなセリフが増えるほど博物館体験の充実度は増していくものですが、個人的に過去最多だったのは、英国オックスフォードのピットリバースミュージアムかもしれません。何しろあのクオリティにあの物量ですから不思議はないのですが、先日、国内で似た満足感が得られた博物館体験がありました。

今回訪問したのは、大分県は豊後高田市の「駄菓子屋の夢博物館」です。展示室に入った途端に目の前に広がる光景に、思わず興奮。ご案内いただいた副館長の山下満さんに「ピットリバースミュージアムみたいですね!」と言ってしまったのですが、昭和世代の方なら写真をご覧いただけば、そんな気持ちをご理解いただけるのではないでしょうか。

左が駄菓子屋の夢博物館、右がピットリバースミュージアム(2014年、筆者撮影)です。その規模こそ別世界ですが、展示ケースがびっしり並ぶ1階フロアとぐるりと囲む回廊の風景、そして何よりも「さぁ観るぞ〜」というワクワク感は、どことなく似ていませんか?

ひとつひとつの展示物の前に立つたびに、いろんな声が出そうなミュージアム。というわけで、さっそく展示のご紹介をば。今回、写真多めです。

前後してしまいましたが、その前にまず館の横顔をおさらいしておきましょう。駄菓子屋の夢博物館は、いまや年間で約40万人もの人々が訪れるという豊後高田市の一大観光資源、昭和30年代の町並みを再現した「昭和の町」の中核施設「昭和ロマン蔵」内にあります。館長は、山下副館長の叔父にあたる小宮裕宣氏、日本有数の玩具コレクターとして有名です。なお、昭和ロマン蔵は4つの建物から成り、当館は東蔵に位置。ほかにも当時の民家や商店、学校の教室を再現した体感施設「昭和の夢町三丁目館」などが集まり、文字通り「昭和のテーマパーク」を形成しています。

というわけで、まずは左の写真をご覧ください。バカボンと鬼太郎、ドン・ガバチョとドナルド、ダースベイダーと鉄人28号…。もうね、リアルタイム世代ならいちいち足が止まってしまう展示物の数々、圧倒的な情報量。懐かしさだけでなく、脳の活動が活性化するかのような新鮮さを併せ持つ昭和エンタメ&アミューズメントのカオス、これこそがこの博物館が人を惹きつける魅力なのです。

では、館内へとお進みください。私の視点で恐縮ですが、階段下のフロアに並ぶ写真右のケースの中身をじっくりと見ていくことにいたしましょう。

左の写真は、グリコのおまけでしょうか。一点一点に目を走らせながら、子どもの頃にはたくさん持っていたっけなぁ…と物思いに耽っていると、「おっ」と声が出ます。

右の写真の真ん中あたり、お気づきでしょうか。スキンヘッドの男性をかたどったアイテム、これはたぶん「トリスおじさん」の爪楊枝入れではないかと思います。これ、我が家にもあったんです。CMも脳裏に蘇りますね。

はっきりと記憶しているもの、ぼんやりと見覚えがあるもの、初めて見るもの。感慨深く眺めていると、次には再び「おお〜、こんなのも!」と小さく叫んでしまいました。

左の写真に集まる、懐かしい文房具たち。右に写るU字型の磁石は、理科の時間で使いましたよね。右は、給食だった方でも遠足などでお使いになったはずの水筒や箸入れ。最近はオシャレなものが多いですが、やっぱりこの形ですよね。手前にあるのは、確か自宅で手軽にアイスキャンディを作るための道具だと思います。

懐かしいと感じるということは、近年の日常の中で見ていなかったということ。50代半ばの私が子どもの頃に愛用していた品々が、そろそろミュージアムの展示物になる時代なのですね。感慨を覚えつつ、次に参ります。

左は『聖闘士星矢』のフィギュア。私は世代的に少しズレていると思いますが、最近、実写映画になりましたね。右は、幅広い世代のキャラクターが入り乱れています。ウルトラマンにアンパンマン、キティちゃん、月光仮面にレレレのおじさん、ミッキーとミニー。さらには、昭和のバラエティ番組『オレたちひょうきん族』に出てきた「タケちゃんマン」の姿も。ついはしゃいでしまいましたが、次の展示の内容を理解すると思わず息をのみました。

正面は、幼い頃の天皇陛下のお写真。その下の2枚には皇太子時代の陛下が写っているのですが、当時、何とこちらの館にお越しになったそうです。なお、中央に写っている木馬は、写真内で幼少期の陛下が乗っておられるものと同型とか。貴重過ぎます。

続いては、かなり時代を遡ります。左の写真はブリキの玩具ですが、中にはMade in OCCUPIED JAPAN(占領下の日本製)と記載されているものもあるとのこと。アメリカ向けに作られていた商品で、当時としては高品質なのだそうです。また、現在、山下副館長はこの膨大な玩具コレクションのデータづくりにお取り組み中とか。「ゼンマイが壊れているものを見つけるとつい修理しちゃって、データ整備が中断してしまうんです」。部屋の片づけをしている時に漫画を手に取ると、そのまま熱中してしまう法則ですよね。分かります。

右の写真の「うつしえ」とは、シートから好きな絵を切り取って裏に水をつけ、絵を転写するもの。当時の子どもたちは、ノートや筆箱などに写して楽しんでいたそうです。左上には左右反転のローマ字も写っていますね。

これは一冊一冊、一枚一枚に見入ってしまいますね。懐かしい少年雑誌とレコードジャケットがズラリと並びます。こちらのコーナーは、脳裏にしっかりと焼き付いているものばかり。山口百恵もキャンディーズもピンクレディーも今なら配信で聴けますが、この時代のヒット曲ならやはりレコードで聴いてみたい気もします。古いアニメの主題歌コレクションは、マニア垂涎なのではないでしょうか。

そして階段を上がり、回廊部分へ。こちらは多数のポスターが展示されています。平成の歌姫たちに、昭和の映画の宣伝ポスター。最近はインターネット上で画像として見ることができますが、紙の質感も含めて、原寸大はやはり迫力が違います。

回廊を降りると、ペコちゃんの人形がいました。これは今でもお馴染み…ですが、よく見ると、ちょっと違和感が。こんなにやんちゃな感じでしたっけ? と副館長に訊ねると、こちらは初期のもので、アメリカで流行していたベティちゃんに似せて作ったのではないか、とのこと。

なるほど、と答えて後ろを振り返ると、昭和の大衆食堂のショーケースが。昭和37年当時の大衆食堂を再現しているそうなのですが、注目は食品サンプルの値段です。焼きそば80円、焼きメシ100円。ちなみに、メニュー内の100円を今の価値に換算すると、2,000円くらいとか。チャーハンが2,000円!

ひとしきり見学すると、頬が弛みまくっているはず。外気で冷ますために外に出ると、子どもの頃に街なかで見かけた憧れの「いすゞ・117クーペ」が! ちょっと年季が入っていますが、今の目で見てもかっこいいですね。それから、街の薬局の前には大抵設置されていた「サトコちゃんムーバー」に、ペプシの自動販売機! こちらは、博物館の入り口に設置されているのですが、写真は敷地のほんの一角に過ぎません。実際は広々とした敷地に、映画のセットと言うよりも当時そのままと思えるほどのリアルな昭和が再現されていました。

もう心を鷲掴みされ、お腹いっぱい胸いっぱいの幸せな気分で展示を眺めてきた駄菓子屋の夢博物館のコレクションは、何と館長が40年以上をかけて収集されたものなのだとか。収蔵品は実に30万点を超え、そのうち約6万点が展示されているそうです。館長は、福岡・西陣で実際に駄菓子屋を経営していたそうで、周囲の玩具店や駄菓子屋が廃業する際に破棄される玩具たちに心を痛め、引き取っては倉庫に保管していたとのこと。その労力や保管コストを考えると、よほどの愛情をお持ちだったのでしょうね。

博物館は、まず太宰府天満宮の参道に資料館として開館。その後、昭和レトロをテーマとした地域おこしを目指す豊後高田市から2年越しのラブコールを受け、昭和ロマン蔵に移転したのだそうです。この施設自体が、もとは明治〜昭和期に栄えた地元の豪商の米蔵を改造したもので、昭和10年頃の建築とのこと。昭和の夢町三丁目館や周辺の町並みも含めるとたっぷり1日楽しめますので、九州旅行の際はぜひお立ち寄りになることをおすすめします。

一般料金は大人 640円、 小中高生 450円。駄菓子屋の夢博物館と昭和の夢三丁目館の両方に入ることができます。

 


駄菓子屋の夢博物館 https://dagashi-yumehaku.com/

昭和の町・豊後高田市 公式観光サイト https://www.city.bungotakada.oita.jp/site/showanomachi/1415.html