ミュージアムインタビュー

vol.16取材年月:2006年5月那珂川町馬頭広重美術館

最も重要なのは履歴情報、そして曖昧な「メモ」。
繊細な日本画だからこそ、情報も繊細に管理すべきなのです。
学芸員 津田 卓子さん

-津田さんがこちらに着任されたときには、I.B.MUSEUMはすでに導入されていたとのことですね。

津田さん:ええ、開館前に入札で決まったようですね。私は、2000年の開館の際に来たんですが、準備室の段階で利用されていましたよ。周りの先輩も当たり前に使っている感じで、すでに溶け込んでいましたね。

-津田さんご自身はいかがでしたか?

津田さん:コンピュータには全く詳しくないんですけど、そんな私でも気が付いたら使っていましたからね。ウチの業務では使いやすかったんでしょうね。

-ありがとうございます。先ほど、ロビーで来館端末をチェックしてきましたけど、機嫌よく動いているようで何よりです。

津田さん:いえ、それが・・・ですね(笑)。言いにくいんですが、3台のうち1台が止まっていたんです、つい今朝まで(笑)。

-え! そうだったんですか?

津田さん:早稲田さんのせいじゃないんですけど、ゴールデンウィークとか、大事な時に調子が悪くなるんですよね。何とかの法則っていうんですかね、これって(笑)。

-う〜ん・・・原因は?

津田さん:それが、さっぱり(笑)。今回も、私がヘンな操作をしたせいかもしれませんが、連休の真っ只中に止まってしまって。早稲田さんもお休みだし、困ったなあ、と。連休が明けて、さあ電話しようと思ったら、勝手に直っていたんです(笑)。

-いや、笑い事じゃないですよ(笑)。戻ったら早速SEに伝えますね。

-津田さんは先ほど、お客様に解説をされていましたね。

津田さん:ええ。団体のお客様の場合は、たいていご案内しますね。学芸員も2人になっちゃいましたし、展覧会の準備などもありますから、いつもおおわらわです。

-お忙しいですね・・・。じゃあ、入力作業など、デスクワークの時間がなかなか確保できないんじゃないですか?

津田さん:お察しの通りです。早稲田さんのホームページで他の館の方々も仰っていますが、どうしても入力作業は後回しになってしまうんですよね。

-業界全体の悩み、ですね。でも、入力さえしてしまえば、あとはシステムの仕事ですから。というわけで、I.B.MUSEUMは、現在のお仕事でお役に立っていますか?

津田さん:そうですね、確かに仕事はスムーズですよ。でも、ウチはちょっと特殊な事情がありますので、あと一歩という点がありまして。ウチみたいな館は、履歴の管理が最も重要なんですよね。

-はあ。浮世絵を専門的に扱っておられるのは、確かに特殊ですよね。

津田さん:では質問です。浮世絵の管理には、なぜ履歴が重要なのでしょう?(笑)

-(ドキッ)・・・あの、スミマセン、私の脳味噌では、ちょっと・・・。ウチのSEならきっと・・・(汗)。

津田さん:答は「色が褪せてしまいますから」ですね。1年間で1ヶ月くらいしか展示できないんですよね、浮世絵って。ですから、「いつからいつまで展示したのか」という履歴データは、作品の命にかかわる重要な情報なんです。

-なるほど!

津田さん:I.B.MUSEUMの履歴管理機能は、一般の美術館用としては十分だと思いますが、日本画を扱う館としては、もう少し繊細に管理したいんですよね。あと、小樽美術館さんのインタビューを読みましたが、ウチもキャプション出力機能が欲しいです。

-なるほどなるほど。いや、本当に参考になります。

-さて、そんなご不満もおありとのことで、覚悟して伺います。I.B.MUSEUMは、100点満点で何点いただけますか?

津田さん:90点以上は付けられますよ。

-(!)ありがとうございます! 履歴管理の問題にも関わらずこの高得点、なぜでしょうか?

津田さん:何といってもSEさんの対応ですね。ウチは最寄り駅がなくて、バスも1日3便しかないという交通の便の悪いところなので、何年か前にリモートコントロールでの保守をお願いしたんですが、よくやってくださいまして。

-はい、お喜びいただけたなら何よりです。

津田さん:それ以外にも、回線変更の手続きをいろいろ教えてくださったり、ウチの担当者が代わると改めてわかりやすく説明しなおしてくださったり。「こんなことまで聞いていいのかしら」ということまで相談に乗ってもらって、本当に感謝しているんですよ。くれぐれも宜しくお伝えくださいね。

-ありがとうございます。必ず伝えます。では最後に、これからシステムを導入される方にアドバイスをお願いします。

津田さん:そうですね。私は、個人的に備考欄をよく使うんですが、メモ書きは意外に重要ですね。分類しづらい曖昧なメモが、それこそ作品の命を守ることもあるんですよね。仕様を決める時、「何でも入力できる項目」を設定しておくと便利ですよ。

-はい、そういうお声はよくいただきます。そこで、I.B.MUSEUM 2005では、項目設定の自由度を高めてみたんですが。

津田さん:そうそう、営業の方から聞きました。とても重要な機能だと思いますよ。もっと宣伝なさっては?(笑)

-日本画を扱う方の太鼓判なら、皆さんにご安心いただけますよ(笑)。本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

<取材年月:2006年5月>

Museum Profile
那珂川町馬頭広重美術館 広々とした平屋建てのシックな建物全体を、地元産の八溝杉による格子(ルーバー)が包み込む、個性あふれる建物が目を引きます。中に入って、その名の通り充実した歌川広重の浮世絵の世界に浸れば、江戸時代の日本人の息づかいを感じることができます。近くには温泉もあり、浮世絵を鑑賞して温泉につかれば、日本再発見ツアーとして面白いかも知れません。そんな楽しみを与えてくれるステキな美術館です。

ホームページ : http://www.hiroshige.bato.tochigi.jp/batou/hp/
〒324-0613 栃木県那須郡那珂川町馬頭116-9
TEL:0287-92-1199