ミュージアムインタビュー

vol.37取材年月:2007年5月東北歴史博物館

よかれと思って付けた機能が、逆に使いにくくなることも。
システムづくりは、あまり複雑にしすぎないことが重要ですね。
学芸員 小谷 竜介さん

-こちらは、NTTデータ東北さんがI.B.MUSEUMを使って、システムを構築されたそうですね。2年ほど前、システム更新の時だったと聞いています。

小谷さん:そうですね。もともと旧システムにすっかり馴染んでいましたから、操作性を踏襲できるシステムを探していまして。

-ということは、以前お使いだったシステムは、特に問題はなかったということですね。にも関わらず入れ替えを決断された理由は?

小谷さん:クライアントアンドサーバのシステムだったので、OSを替えると一緒に収蔵品管理の環境も再構築しなければならないのが不便で。この問題の解決がリニューアルの大きな課題となりました。

-なるほど。いくつか候補をご覧になったんですよね?

小谷さん:2~3社、営業に来られたので、相談はしましたよ。でも、予算内で実現しそうなのはNTTデータ東北さんのご提案だけでしたね。

-予算と機能を唯一両立できたシステムだったということですか。それは光栄です。以前のシステムと比較して、いかがですか? ご期待に応えておりますでしょうか?

小谷さん:従来システムを踏襲する仕様ですから、大きな問題はないですよ。でも、細かい使い勝手の点では、いろいろとありますね。

-使い勝手が良くないんですか? 詳しく教えてください。

-では、困っていらっしゃること、ひとつずつお話いただけますか?

小谷さん:まず、画像を登録する際にドラックアンドドロップが利かなくなったことは、ちょっと厳しいですね。当館がWebブラウザで動く仕様を選択したことに起因することですので、仕方のない話ではあるんですけどね。

-画像ファイルを1枚ずつ指定する方法のことですね。

小谷さん:ええ。今現在、登録しなければならない画像が1万8千枚も残っていましてね。あの操作を、あと1万8千回も行うと考えると…。

-そ、それは相当大変ですね…。

小谷さん:以前は100枚でも一気に登録できましたから、やはり使い勝手は落ちたと言うべきでしょうね。

-そうですか…(がっかり)。

小谷さん:と言っても、前のシステムでも面倒な作業ではあったんですけどね。あらかじめ画像ファイルをリスト化していたんですが、登録前には画像100枚分のリストを180回作るわけですから。もともと気の遠くなるような仕事なんです。

-何とか工夫して、一度にまとめて登録できる方法を考えたいですね。その他の点はいかがでしょう?

小谷さん:Webブラウザで作業できるようになったのは非常に良かったんですが、ついついブラウザの「戻る」ボタンを押したくなるんです。クセがついていますから、できればボタンが利くようにしたいな、と。

-なるほど。あれ、実は制限している理由があるんです。でも、これだけブラウザの操作に慣れてくると、やはりどうしても同じ使用感を求めてしまいますよね。これも検討事項として…他には?

小谷さん:導入したてのころは、テスト環境と実データの違いでしょうか、検索スピードが遅かったりしましたね。すぐ直してもらいましたけど。あとは、「問題」というより、思想の違いなのかもしれませんが…。

-はい。ご遠慮なく仰ってください。

小谷さん:一括登録を実行する時、一部にエラーがあっても正常なデータは登録してしまうんですね。以前は、部分的なエラーが発生した際は登録の実行自体をキャンセルしていたんですが。使う側の慣れの問題なのかもしれませんが、そういう「振る舞い」の部分にちょっと違和感がありますね。

-なるほど、「振る舞い」ですか。打合せの初期段階でしっかり議論して、その違いは潰しておくべきでしたね…。

小谷さん:「違い」と言えば、自動符番となっている資料IDですが、空打ちしても番号が採られますよね。公開するときの資料番号ですので、違う扱いにしてもらえば良かったなと思っています。

-欠番がたくさん出てしまっているわけですね。そのあたりも、打合せでしっかり詰めるべき事項ですよね…。

小谷さん:まあ、あまりしんみりせずに(笑)。その一方、良かったこともたくさんあるんですよ。特に、資料カードはとても見やすくなりました。1画面ですべて見渡せるという仕様には、とても助かっていますよ。

-ありがとうございます…。

小谷さん:項目が多くて何画面にも分かれていると、「この項目は何番目」という決まりごとを覚えるのも大変ですからね。おかげさまで、貸出承諾書の出力機能なんかもきちんと追加されましたし、操作性が大きく上がった点も少なくありません。機種やOSに影響されないという目標も達成できましたし。

-ありがとうございます。あと、サポート面には問題はありませんか?

小谷さん:それはもう、NTTデータ東北さんがきめ細かく来てくださいますから、大丈夫ですよ。早稲田さんにもしっかり対応してもらってますから、問題ありません。

-さすがですね。弊社も見習わないと。

-では、恒例の質問です。I.B.MUSEUMは、100点満点で何点になるでしょう?

小谷さん:課題はありますが、70点は固いですね。十分に合格点だと思いますよ。

-ありがとうございます、ちょっとホッとしました(笑)。今後の改善も、検討を進めますね。では、これからシステムを導入される方に、アドバイスをお願いします。

小谷さん:そうですね。「あまり複雑にしないこと」でしょうか。思わぬところに影響が出て、逆に使いにくくなったりする場合もありますからね。

-具体例を挙げると、どういうことですか?

小谷さん:例えば、張り切って項目の数を増やすのは良いのですが、多すぎると検索条件を指定するプルダウンメニューが長くなるんです。こんな風に(画面を示して)。

-わっ。これは探しにくいですね…。

小谷さん:確かに使いやすい検索メニューなんですが、こうなってしまうとね。「窓1個」のGoogleみたいに、シンプルな部分も残す方向で考えると良いと思いますよ。

-シンプルが一番、これは私たちも肝に銘じなければなりませんね。本日は、細かく聞かせていただいて、参考になりました。お忙しい中、ありがとうございました。

<取材年月:2007年5月>

Museum Profile
東北歴史博物館 奈良時代に陸奥国の国府と鎮守府が置かれ、約200年にわたり政治・軍事の拠点となった宮城県多賀城市に位置する、東北地方を代表する博物館。総合展示室やテーマ展示室に加え、「インタラクティブシアター」「ワークテーブル」「パソコンランド」から成るこども歴史館、そして江戸中期の民家を移築・復元した今野家住宅など、大人から子供まで楽しみながら歴史に触れることができます。地元の小学校と協力しての畑作体験など、学校教育との連携企画も活発。親子みんなで楽しめると評判の、存在感に満ちた博物館です。

ホームページ : http://www.thm.pref.miyagi.jp/
〒985-0862 宮城県多賀城市高崎1-22-1
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